次の恐慌時に高騰するのは金や金鉱株

次の恐慌時に高騰するのは金や金鉱株

(相場研究家) 市岡 繁男
2021年5月21日

 
1981年から始まった金利低下局面は今年で40年目になる。これまで60年周期で動いてきた米長期金利はいつ反転してもおかしくない時期だ(図1)。
だが世界は金利上昇を心配することなく債務を積み上げてきた。金利上昇で株価が暴落しても、各国中銀の思い切った金融緩和で救済され、更に金利が低下する歴史を辿ってきたからだ。

【図1 】 アメリカの長期国債利回り( 1830 年までは英国債のデータ)【図1 】 アメリカの長期国債利回り( 1830 年までは英国債のデータ)(出所)アメリカ歴史統計、イギリス歴史統計、FRB

だが中央銀行とて無限に量的緩和策を継続することは出来ない。
いつの日か中銀に対する信認が失われ、紙幣よりモノが選好される臨界点を迎えるからだ。それは国債も同じで、例えば基軸通貨国=米国の「権威」が揺らぐなら全世界の金利が影響を受けてしまう。過去には17世紀初頭、覇権国スペインの没落で信用不安が波及し、それまで1%台で推移していた伊ジェノバの金利が急騰した事例もある(図2)。

【図2 】 1600 年前後のイタリア・ジェノバ金利推移【図2 】 1600 年前後のイタリア・ジェノバ金利推移(出所)A History of Interest Rates: S.Homer, R.Sylla

長らく続いた金利低下局面が終焉を迎える時(パラダイムシフト)は、90年ぶりの世界恐慌に陥る時でもある。低金利の持続を前提に総額3京円まで積みあがった世界債務が返済不能になるからだ。これに対し中銀はマネー増発でしか対処出来ないので、来るべき危機はデフレではなくインフレとなる。
そうなると打撃が大きいのは債券や不動産であって株式ではない。株式は実物資産としての側面が評価されるので、短期的には売られても中長期的には有望なのだ。また不動産が買われないのは、インフレによる貸金の目減りを恐れる銀行が融資を渋るからだ。反面、高騰する資産は貴金属をはじめとする商品だ。
株式や商品が買われるのであれば、その両方の性質をもつ金鉱株が最も良いことになる。このところ米国上場の金鉱株がしっかりしており、代表的な銘柄であるニューモント・マイニング(NEM)は今年2月26日の安値から35%も上昇している。もしこれが先行きのインフレ恐慌を先取りした動きだとするならば、だいぶ値上がりしたとはいえ、まだ絶好の買い場なのでないか。

相場研究家市岡 繁男(いちおか しげお)氏
市岡 繁男(いちおか しげお)氏

1958年、北海道生まれ。
81年一橋大卒、住友信託銀行入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。
1996年に同社を退職後は長銀、あさひ銀行、ロスチャイルド投資顧問、日本興亜損保、富国生命、中前国際経済研究所で内外債券、株式、為替の運用や調査研究業務を務めた。
2018年に独立し、現在は財団等の投資アドバイザーを務める。
週刊エコノミスト、日経ビジネスなどへの執筆多数。