87年ブラックマンデー前後の株価、債券、為替、そして金価格

ブラックマンデー前後

(相場研究家) 市岡 繁男
2021年3月8日

 
米長期金利の上昇が止まらない。これまでは低インフレとFRBの金融緩和で金利上昇が抑えられていたが、一連の財政政策で耐久消費財への需要が急増し、製造業を中心に賃金も高騰しているからだ。過去を振り返ると、賃金の伸び率と長期金利は連動しており、金利の上昇はまだ始まったばかりだと言えよう。

ここで問題はその上昇ピッチの早さで、債券先物( T-Bond )価格は昨年8月4日のピークから直近までの7ヶ月間で14%も下落している。同様の事態は1987年にもあり、最後は株価大暴落(ブラックマンデー)で終止符が打たれた。当時といまの債券先物(金利上昇なら価格下落)の値動きは似通っており(図1)、今のペースで金利が上昇するなら5月中旬にも株価が崩落するイメージとなる。

87年と現在の米国債券先物価格、および87年のNYダウ株価
(1987年1月6日と2020年8月4日のT-bond先物価格を100として対比)
「株価÷商品相場」と 「財政収支÷名目GDP」

もっとも米長期金利はまだ1.5%台であり、筆者が注視する警戒ライン=10年移動平均線(現在は2.1%)まで余裕がある。このラインは米長期債を継続的に購入する機関投資家の平均コストに相当する。なので、それ以上に金利が上がるなら債券の含み益は失われ、株式等への投資は縮小せざるを得なくなるのだ。今はまだそこまで行っていないが、最悪の事態を想定しておけば、いざという時にはピンチがチャンスに変わるだろう。
そこで87年のブラックマンデー前後に、金はどのような値動きをしたのかを見てみよう(図2)。
まず暴落Xデーまでは460ドル/toz±20ドルのレンジ内の動きだった。暴落当日は前日の465ドルから481ドルに高騰したが、翌10月20日はもとの466ドルに戻ってしまう。これは株の暴落でファンド筋に追証が発生し、唯一、利が乗っていた金も売却を余儀なくされたからだ。

ブラックマンデー前後の長期金利と株、為替、金の日足
(株、ドル円、金:1987年4月~8月の高値=100として対比)
金と金鉱株、その金融市場におけるウエイト

その後の1ヶ月間は以前のレンジ取引に戻ったが、12月中旬には一時500ドルの大台に乗せた。一旦は落ち着いた長期金利が11月下旬から再び上昇し、もう一度、株価が暴落するのではという恐怖感から金が買われたのである。だが、その後は金融市場が安定に向かい、以後、金は長い雌伏の時を迎える。

 翻って今、87年と同様の事態が起きたとしても、金の上昇は一過性では終わらず、最高値を更新し続ける動きとなろう。なぜならば、米国の非金融部門・債務比率(「政府+家計+事業会社」の債務÷名目GDP)は87年の177%から290%(昨年9月末時点)に膨張しているからだ。
ブラックマンデーのような金融危機になれば、各国政府はさらに債務を増やして対応するだろう。これは言うまでもなく金の上昇要因である。人々はもはや信頼に値する資産は希少価値が薄れた金融資産ではなく、物理的に有限な金しか残っていないことを再認識するに違いない。

相場研究家市岡 繁男(いちおか しげお)氏
市岡 繁男(いちおか しげお)氏

1958年、北海道生まれ。
81年一橋大卒、住友信託銀行入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。
1996年に同社を退職後は長銀、あさひ銀行、ロスチャイルド投資顧問、日本興亜損保、富国生命、中前国際経済研究所で内外債券、株式、為替の運用や調査研究業務を務めた。
2018年に独立し、現在は財団等の投資アドバイザーを務める。
週刊エコノミスト、日経ビジネスなどへの執筆多数。

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