貴金属の上昇は始まったばかり!!

貴金属の上昇

(相場研究家) 市岡 繁男
2021年2月4日

 
米財務省は昨年10月、コロナ禍の感染拡大を受けた経済対策実施などで、連邦政府の2020会計年度(19年10月-20年9月)財政赤字は約3兆1320億㌦(約330兆円)、名目国内総生産(GDP)比では約16%になったと発表した。これは戦時中の1945年以来の高水準だ。

米国の150年間に亘る株式と商品の相対価格をみると、グラフが下向きだった「実物資産優位」の時代がある。株式より商品が選好された過去4回の10数年期は、戦争や恐慌、金融危機といった苦難に直面し、財政赤字が拡大した局面でもあった(図1)。平和な時代は「民間主導の経済成長=株高」を見守っていれば良いが、動乱の時代は政府主導で有事に必要なカネや物資の需要が増すのである。

「株価÷商品相場」と 「財政収支÷名目GDP」「株価÷商品相場」と 「財政収支÷名目GDP」(出所:米財務省、アメリカ歴史統計、BP、ブルームバーグ、Global Financial Data)
注)株価:S&P500、商品相場:小麦、綿花、石油、銀価格を指数化(1871年=100)して単純平均ン、「株価÷商品相場」を対数表示した。データは2020年12月末時点

 だとすると、コロナ禍の影響で未曾有の財政赤字拡大で始まった2020年代も、株式よりも商品(モノ)が求められる動乱の10年期となるのでないか。一昨年からの貴金属急騰はその先駆けで、まだ始まったばかりだと思う。
筆者の試算では、いま世界にある金現物の時価総額は約10兆㌦で、米金融市場(債務総額+株式時価総額=約101兆㌦、昨年9月末時点)の1割にも満たない。前回、金が800㌦の高値をつけた1980年はその割合が3割もあったことを思えば、金の上値余地は大きい(図2)。
同様に金鉱株指数のウエイトも市場全体の0・7%とまだ過小だ。ちなみにニューヨーク市場に上場する代表的な金鉱株は、ニューモント・マイニング(NEM)、バリック・ゴールド(GOLD、この株はWバフェットも購入)、フランコネバダ(FNV)、アグニコ・イーグルマイン(AEM)、ヤマナゴールド(AUY)といったあたりだ。

金と金鉱株、その金融市場におけるウエイト金と金鉱株、その金融市場におけるウエイト(出所)米国地質調査所(USGS)、World Gold Council、FRB、ブルームバーグ
注1)金現物の時価総額:1900-1952年の金産出量39099㌧(USGS)を起点に、USGSが発表する毎年の金生産量を累積し、年末時点の金価格を掛け合わせた筆者の推計値
注2)米金融市場の規模:債務残高+株式時価の合計、データは2020年9月時点。

相場研究家市岡 繁男(いちおか しげお)氏
市岡 繁男(いちおか しげお)氏

1958年、北海道生まれ。
81年一橋大卒、住友信託銀行入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。
1996年に同社を退職後は長銀、あさひ銀行、ロスチャイルド投資顧問、日本興亜損保、富国生命、中前国際経済研究所で内外債券、株式、為替の運用や調査研究業務を務めた。
2018年に独立し、現在は財団等の投資アドバイザーを務める。
週刊エコノミスト、日経ビジネスなどへの執筆多数。

当資料は情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に係わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。