金を売るなんてもったいない!!

金を手放さない

(相場研究家) 市岡 繁男
2021年2月4日

 
日本の公的金準備量は第一次大戦を挟んで急増し、1925年には866㌧に拡大した。だが、その後の恐慌と戦争で全てを失い、50年にはわずか6㌧に減少した。それが戦後の経済復興で78年は746㌧と、戦前のピークまであと一歩まで回復した。だが、その後は他の先進国と同様、金準備量は全く増加していない。
 
代わりに増えたのは民間の金保有だ。きっかけは86年の天皇御在位60年記念金貨の発行である。この年、政府は600㌧の金を輸入したが、その後も輸入超過の状況が続き、78年からの22年間で約3,800㌧の金が流入した。
 
それが21世紀に入って状況が一変し、昨年末までの20年間にその7割相当量を失う。主因は25~64歳人口の縮小だ。その総数と金の累積輸入量の相関に注目されたい(図1)。

【図1】日本 1978年以降の金「輸入ー輸出」の累積値と25-64歳人口数978年以降の金「輸入ー輸出」の累積値出所:総務省(人口統計)、財務省(貿易統計)
※金貨を除く、2020年は2019年12月~2020年11月までの暫定値

04年以降、購買力がある年齢層が806万人(11%)も減少したことから、国内では金の買い手が不足し海外に流出したのだ。


80年1月につけた円建ての金最高値(1㌘=6,495円)は昨年7月、20年ぶりに更新した。だが日本の金相場は80年1月より僅か1%しか上がっていない計算だ(図2、税抜き)。
金相場はまだかなりの上値余地があると思われるだけに、輸出超過が続く現状は残念でならない。

【図2】各国通貨建ての金相場(1980年1月の高値(800ドル/toz)を100として対比)各国通貨建ての金相場出所:Bloomberg, FRB

相場研究家市岡 繁男(いちおか しげお)氏
市岡 繁男(いちおか しげお)氏

1958年、北海道生まれ。
81年一橋大卒、住友信託銀行入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。
1996年に同社を退職後は長銀、あさひ銀行、ロスチャイルド投資顧問、日本興亜損保、富国生命、中前国際経済研究所で内外債券、株式、為替の運用や調査研究業務を務めた。
2018年に独立し、現在は財団等の投資アドバイザーを務める。
週刊エコノミスト、日経ビジネスなどへの執筆多数。

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