第1回 なぜ永遠の安全資産と呼ばれるの? | 【公式】日産証券の金投資コラム

2020年8月、史上最高値を更新し7000円台を付け、大きな注目を集めた金。
『金』がいつの時代も話題となり、様々なメディアで取り上げられるには理由があります。

金が必要とされる理由とは

ツタンカーメンの黄金マスクなど、古代エジプト文明の時代(紀元前3000年)から金は装飾品の材料として使用されていました。また同時期、メソポタミア文明においてもメソポタミア人は交易に数種類の「貨幣のようなもの」を用い、その中で最も価値が高いものとして金を利用していたそうです。
数千年経っても変わらぬ輝きを持つ不変性と、その希少性で世界中の人々を魅了し続けている金。ここではその基本的な性質や役割(必要性)についてみていきましょう。

実物資産であり、発行体リスクがない資産

金は実物資産であり、そのもの自体に価値があります。一方、株式であれば発行体はその企業、国債や通貨であればその国の政府が発行体です。こうした資産は企業の業績やその国の信用によって価値が保たれるのですが、場合によっては最悪倒産やデフォルト、通貨暴落といった信用リスクがつきまといます。
しかし、金はどうでしょう。金には発行体がありません。『誰の負債でもない資産』と言えます。このことから金は『安全資産』と言われています。
実際に金は有史以来その価値がゼロになった事はありません。

有事の金

戦争やテロなどの有事(地政学リスクの高まり)が起こると、政治・経済が混乱して金融システムや企業活動が阻害され、世界経済の先行きに不透明感が高まり、株式や外為、債券など金融市場の動きはとても不安定になります。過去において戦争・テロ・政情不安や金融危機の際には、信用リスクに無縁の金が安全資産として買われ価格が上昇する傾向がありました。これが『有事の金』と言われる金の大きな特徴の一つです。そのため平時においても何かあった時の「転ばぬ先の杖」として資産の一部を金に変え保険を掛ける(=リスクヘッジ)ことが資産保全のために有効だとされています。

ポートフォリオとしての金

投資の格言として『卵を一つのかごに盛るな』と聞いたことはありませんか。
例えば株式投資において一つの銘柄に集中投資すると、うまく株価が上昇すれば大きな利益となりますが、下落すると大きな損失となり、収益は安定しにくくなります。そこで業種や銘柄を分けることでリスクを分散します。又、株式だけでなく債券、通貨、不動産などに分散して投資することでリスクを軽減でき、資産全体の収益が安定するという考え方です。そのポートフォリオの一つとして実物資産である金は、他の金融資産と相関が少なく、換金性・流動性にも優れており、資産に多様性を持たせるという観点からも取り入れるメリットは大きいでしょう。

インフレヘッジとしての金

金はインフレに強いと言われます。なぜなら、インフレが進むと相対的に通貨価値が下落し、おカネの購買力は低下します。一方金は装飾品材料や電子部品にも多く使用されるモノでもあり、インフレ=物価高局面ではモノである金の価値も高くなるからです。日本では90年代のバブル崩壊以降、低金利政策が長く続いていますが、21世紀に入り度重なる金融危機や米中貿易戦争の対立、コロナショックによって、現在、米国をはじめ世界各国が未曾有の低金利と量的緩和政策を実行し、大量のマネーが市場に溢れている現状を考えると、「将来の備えに金を持つ」という意味はありそうです。

デフレと金

インフレ時の金高はイメージしやすいですが、ではデフレ(=物価下落)期においてはどうでしょう。デフレ期の特徴としては、金利は低下傾向、経済収縮から消費や投資は低迷しがちになり景気の悪化が顕著になると、企業や国家の信用不安が高まります。その結果、株式や債券が下落するため破綻リスクのない通貨としての側面を持つ金の需要につながります。モノと通貨の二面性を持つ金の特徴と言えるでしょう。

金の生産量と地上在庫

世界全体の金の年間生産量は約3500tです。国別で見ますと以前は南アフリカが主役でしたが鉱山の老朽化や人件費の関係からその生産量は減り続け、一方中国が生産量を伸ばし現在は中国が最大の産金国となっています。ただ、地域別にみると鉱山生産は各大陸に均等に分布しており、これは、産出国が特定の地域に偏っている商品(石油や白金族メタルなど)などと比較した場合の価格変動幅の小ささに寄与しています。
有史以来、人類が掘り出した金の量、地上在庫は約20万tと考えられています。現在の産出ペースでは年間1.8%程度しか地上在庫は増えません。地上在庫の伸びはこの10年で24%程しか増えていません。
一方、各国中央銀行は量的緩和で国債を買い続けることで、その総資産はリーマンショック以降、急激な伸びを示しています。
モノである金と金融財政政策により増減できるマネーとの大きな違いです。

無国籍通貨としての金

金はかつて通貨として使われた歴史がありますが、現在は金を使ってスーパーで買い物をすることはできませんが、いざという時には国家間の貿易決済に金が使われたり、自国通貨の下落を買い支えるために金を売却するという『無国籍通貨』としての存在感を高めています。無国籍通貨とは、発行する国などの信用リスクにより左右されない通貨という意味です。
かつて米国では金とドルの交換比率を1トロイオンス=35ドルとする『金ドル本位制』をとっていました。その後、1971年の「ニクソンショック」で金と米ドルの兌換が停止され、1973年までに各国が変動為替相場制に移行したことで金本位制は有名無実化となり終了しました。
しかし、金本位制終了後も、金は世界各国政府・中央銀行の持つ外貨準備の中で「世界的な準備資産として依然として重要」(IMFワシントン協定)とされており、世界全体の外貨準備に占める金のシェアは、米ドル、ユーロに次いで3番目に大きな規模(14.4%)となっています(WGC調べ、20年第3四半期末現在)。
現在もドルが基軸通貨ですが2000年以降、ドルの信認低下からか、新興国を中心にドルに代わる資産として金を保有する傾向が強まっています。
実際ドルと金の関係を比較してみますと逆相関関係の傾向があることが分かります。
ドル安→金高
ドル高→金安
したがって、『無国籍通貨金』には通貨ヘッジ効果もあるようです。

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